サカナ記念日

神秘熊野から魚便りをお届けします。

懐かしの熊野の漁業 今昔物語

八十キロもあるマグロのはねているのをしめて、料って食べるんですが、おいしかったね。皆が食べるマグロは赤いやろ、けど獲りたてのは薄いピンク色した半透明の肉で、 血の模様がすけて見えたもんや。

 

熊野の漁師の思い出話です。今から約30年前に書かれた『私たちの郷土』という本の中で紹介されている話です。この本は当時、荒坂中学校に通っていた中学生がまとめた郷土研究資料です。熊野市立図書館で見つけました。荒坂中学校は熊野市二木島町にあった中学校です。(現在では廃校になっています)この話の他にも、興味深い話が出ておりましたので、二つ紹介します。

 

f:id:kumanofish:20191127160138j:plain

熊野市立図書館です。

まずはサンマ漁の話を紹介します。今から約30年前に85歳だった漁師の方が、若かりし頃のサンマ漁について語っています。ということは今から100年近く前の話になりますね。当時は機械船が導入される前で、櫓をこいで漁に出ていたそうです。当時はイルカが沢山いたようで、イルカがサンマを追い回してサンマの群れを集めてくれることがよくあったそうです。そのサンマの群れに網をかけて一網打尽にしたそうです。イルカがいないときには、サンマに向かって石を投げて、サンマを追い立てて魚群を作ったそうです。一回の漁で20トンもの水揚げを記録した時もあったとのことです。

 

次はマグロ漁の話です。今から約30年前に46歳だった漁師の方の若かりし頃の思い出話です。ということは今から50年くらい前の話ですね。当時、巻網漁でマグロを獲っていたそうです。15人程で掛け声を合わせながら、1~2時間もの間、手で網を引いて水揚げしたそうです。最後は若い衆が海に飛び込んで、暴れるマグロの尾をロープで縛って、クレーンで船に水揚げしたそうです。10時間以上も海に入っていることがあったそうで、大変な重労働だったことでしょう。その時は80kgほどのキハダマグロを千尾も獲ったそうです。

 

翻って現在。現在の漁業は機械化が進み、かつてに比べると漁師の方の肉体的負担は大幅に軽減されました。テクノロジーの進展は、利便性を大幅に向上させてくれました。大変有難いことです。と同時に失ったものもあるのかもしれません。大漁を成し遂げた時の喜びは、現在より昔の方が大きかったような気がします。苦労が大きかった分だけ、喜びもひとしおだったことでしょう。かつては、水揚げに応じて日本酒を支給する漁協もあったそうで、大漁の日は海の上で飲んで踊っての宴会をしたこともあったそうです。大海原に響く歓声がどこかから聞こえてくるような気がします。

 

Instagram

絶品! 知る人ぞ知る ヒラソウダカツオのお刺身

ヒラソウダカツオをご存知でしょうか。鮮度落ちが早いため、都市部には生食用としてはなかなか流通しない魚です。宗田節などに加工されてよく出回っています。漁獲量が少ないわけではなく、私の暮らす熊野などの産地周辺では刺身用としてもスーパーなどでもよく出回っております。値段も割とお手頃で財布にも優しいです。

 

https://www.instagram.com/p/B4d-vEEAFU1/

 

 

そんなヒラソウダカツオのお刺身、実は絶品なのです!個人的には旬のヒラソウダカツオの刺身は、本カツオをも凌ぐ美味だと思います。脂がすごいんです!全身トロみたいになっています。旬がいつかといいますと冬です。寒くなると脂を蓄えるのですね。ただ、夏場に食べたヒラソウダカツオもかなり脂がのっていましたので、個体差はあるのでしょう。

 

https://www.instagram.com/p/BrwyOcbgO9z/

 

ヒラソウダカツオに非常によく似たマルソウダカツオという魚がいます。マルソウダカツオは基本的に生食はできませんので注意して下さいね。私は一度試しにマルソウダカツオの刺身を食べたことがあります。案の定、当たりました。

 

いかがでしたでしょうか。新鮮な状態でしか食べることができないヒラソウダカツオの刺身は、脂のりのりで絶品という話でした。都市部ではなかなか味わう機会がないでしょう。これから本格的な旬を迎えるヒラソウダカツオのお刺身を召し上がるために、熊野にお越しください!

 

Instagram

熊野のソウルフード さんまの丸干しとは

熊野の二大ソウルフードといえば、さんま寿司とさんまの丸干しです。以前のブログでさんま寿司について紹介しましたので、今回はさんまの丸干しを紹介します。

 

https://www.instagram.com/p/BtaZq0FgjCZ/

 

さんまの丸干しはその名の通り、さんまを塩に漬けて、そのまま丸干しした干物です。さんまというと、生さんまの塩焼きを思い浮かべる方が多いでしょう。脂の乗ったさんまの塩焼きは絶品ですよね。熊野のさんまの丸干しは、脂は少な目ですが、旨味がぎゅっと凝縮されており、生さんまの塩焼きとは一味違った一品です。サンマは冬から春先にかけて、熊野周辺の海に回遊してきます。熊野の周辺で獲れるサンマは脂が適度に抜けており、丸干しに最適なのです。

 

調理法としては、基本は焼いて食べます。七輪で炭火を熾して、炙って食べると最高です。日本酒のつまみとしても最高ですよ!個人的には、熱燗をちびちびやりながら熱々のさんまの丸干しを食べるのが好きです。もう一つのオススメはお茶漬けです。焼いたさんまの丸干しの身をほぐしてご飯の上に乗せます。熱々のお茶を注いでお召し上がりください。さんまの旨味とお茶の風味がとてもよく合います。何杯でもご飯が食べれますよ!熊野の人々は、さんまの丸干しをご飯のお供、酒のつまみだけではなく、おやつ感覚で食べます。5本くらいはぺろりと平らげてしまいます。まさに熊野のソウルフード

 

https://www.instagram.com/p/Bga02lRndQm/

 

シーズンの冬から春先になると、熊野の海岸沿いにはさんまを丸干しする風景がよく見られ、風物詩となっております。冷えた、きれいな潮風に揺られて、旨味いっぱいのさんまの丸干しが出来上がるのですね。熊野の自然と伝統に育まれたさんまの丸干し、是非ご賞味ください。熊野の干物屋さんであれば、ほぼどこでも扱っています。お店ごとに味の違いがあり、食べ比べも面白いですよ!

 

Instagram

鈴木さん、スズキと熊野の深い関係とは

鈴木さんと魚のスズキは、共に熊野と深い関係があります。

 

①鈴木氏のルーツは熊野にある。

平家物語にスズキと熊野の深い縁を物語る記述がある。

 

①鈴木氏のルーツは熊野にある。

稲穂を重ねた棒のことを熊野ではススキ、スズキと呼んでいました。ここから鈴木という姓が生まれたと言われています。鈴木氏は熊野で神官をしていた家系だと言われています。古事記日本書紀の神話の中にも登場する大変長い歴史を有する氏族です。鈴木氏は熊野から全国に散らばり、熊野信仰を広めたとされています。

現在では、佐藤さんに次いで日本で二番目の数を誇る姓です。著名人ですと、首相を務めた故鈴木善幸氏やスズキ自動車会長の鈴木修氏がいますね。ちなみに鈴木善幸氏の父親は漁師であり、自身は水産学校を出て、水産庁の設置等の水産政策に深く関わった漁業に関係の深い人物です。歴史的人物としては、戦国時代に戦闘集団の棟梁として活躍した鈴木孫一雑賀孫一)などがいます。鈴木孫一織田信長とも戦ったといわれています。現在の熊野市有馬の海岸沿いに鈴木孫一のお墓があります。晩年は戦闘から離れ、この地で静かに暮らしたといわれています。寄せては返す波の音を毎日聞きながら余生を過ごしたのでしょう。下の写真は鈴木孫一のお墓です。

 

https://www.instagram.com/p/Bkoq4xQFfV2/

 

 

平家物語にスズキと熊野の深い縁を物語る記述がある。

平家かやうに繁昌せられけるも、熊野権現の御利生とぞ聞えし。其故は、古へ清盛公、いまだ安芸守たりし時、伊勢の海より、船にて熊野へ参られけるに、おおきなる鱸の、船に躍り入りたりけるを、先達申しけるは、「是は権現の御利生なり。いそぎまゐるべし」と申しければ、清盛の給ひけるは、「昔周の武王の船にこそ、白魚は躍入りたりけるなれ。是吉事なり」とて、さばかりの十戒をたもち、精進潔斎の道なれども、調味して、家子・侍共にくはせられけり。其故にや、吉事のみうちつずいて、太政大臣まできはめ給へり。子孫の官途も、竜の雲に昇るよりは、猶すみやか也。

平家物語の『鱸』という一章の中の文章です。鱸は魚のスズキのことです。かいつまんで現代語訳します。

平清盛一行は伊勢の海から船で熊野詣に向かいました。その際に、船の中に大きなスズキが飛び入ってきました。清盛はこれはめでたいと言って、調理して同行者にも食べさせました。それ故か、吉事が続いて、清盛は太政大臣の地位まで上り詰めました。子孫も竜が雲に昇るより早く出世しました。

平清盛一行は熊野詣の道中にスズキを食べた故に、その後の平家はこの世の栄華を極めることができた、という話です。スズキはなんともめでたい魚なのですね。下の写真はスズキです。スズキは大きく分けてマルスズキとヒラスズキの二種類います。このスズキはヒラスズキです。

https://www.instagram.com/p/BnDzjdMFcAn/

 

いかがでしたでしょうか。鈴木さんのルーツは熊野にある、魚のスズキは熊野に縁が深い、めでたい魚であるという話でした。全国の鈴木さん、おめでたいスズキにあやかりたい皆さま、是非熊野にお越しください!

 

Instagram

今が旬の魚「カマス」のおすすめレシピ

カマスは嫁に食わすな 

 秋のカマスは、嫁に食べさせたくないほど美味しい、という意味のことわざです。そんなに美味しいのであれば、自分の大切な人にも食べさせてあげればいいのに、という気がします。それはさて置き、旬のカマスがとても美味しいことは確かです。カマスには沢山の種類がありますが、日本で主に上がるのはヤマトカマスとアカカマスです。今回は、熊野周辺の海で多く揚がる今が旬のヤマトカマスを使った、おすすめの料理を紹介します。

 

https://www.instagram.com/p/BymGDbigSY5/

 

カマスは鋭い歯を持つ獰猛な魚です。見た目とは裏腹に、カマスはうまみ、甘味たっぷりの優しい味わいを持つ魚ですカマスの食べ方というと、干物や塩焼きを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。もちろんこれらの料理も絶品ですが、今回はお刺身系の料理を紹介します。カマスは身が柔らかく、鮮度落ちが早いため、新鮮なものが手に入る産地周辺でないと、なかなかお刺身を口にする機会はないでしょう。

 

https://www.instagram.com/p/B1s6-InAI8r/

 

カマスのマリネです。カマスの刺身を果実酢、オリーブオイル、塩コショウを合わせたマリネ液に漬けます。レモン、トマトなど色とりどりの食材と共に盛り付けて完成です。酢の爽やかな風味とうまみたっぷりのカマスの刺身がとても合います。

 

https://www.instagram.com/p/B0LESHxgoZn/

 

カマスの炙り刺身です。皮目を炙って、氷水でさっと冷やした後、お好みの大きさに切って完成です。カマスは皮の周辺にうまみがたくさんあります。香ばしい風味とカマスのうまみを共にお楽しみいただけます。

 

https://www.instagram.com/p/Blhy0_iFdB-/

 

 

カマスの握りです。カマスはうまみたっぷりで、もちろんご飯にも合います。

 

いかがでしたでしょうか。今回は、今が旬のカマスを使ったおすすめ料理を紹介いたしました。鮮度落ちが早いため、産地周辺でしかなかなか食べることができない貴重なカマスのお刺身。熊野では、カマスの旬は終わりつつあります。急いで熊野にお越しください!

 

Instagram

熊野の伝統食 さんま寿司とは

実は、日本で食べられている魚で、すべて国産且つ天然の魚はサンマだけです。ちなみに、熊野の年配の方はサンマのことをサイレと呼んでいます。今回はそのサンマを使った熊野の伝統食、さんま寿司を紹介します。

 

サンマと言いますと、夏から秋にかけて北海道や東北で揚がるものを思い浮かべる方が多いかと思います。サンマは回遊魚で、冬から春先にかけて黒潮に乗って、熊野周辺の海にも回遊してきます。熊野に回遊してくるサンマは、適度に脂が抜けていて、塩や酢の浸透が良いため、干物、すしな(塩漬け、酢漬けした生魚)といった料理に向いています。

f:id:kumanofish:20190925162203j:plain

熊野で揚がったばかりのサンマです。

 

熊野の伝統食であるさんま寿司は、開いたサンマを塩漬け、酢漬けにし、酢飯に乗せて巻いた棒寿司です。シンプルな料理ですが、実は奥が深いのです。塩や酢の効かせ方具合によって味が大きく変わります。さらに、柑橘酢を使ったものや、なれすし(発酵寿司)もあり、地域や家庭、お店によって様々な味のバリエーションがあります。

 

f:id:kumanofish:20190925162251j:plain

さんま寿司です。

 

実は、さんま寿司発祥の地は熊野です。

熊野市に産田(うぶた)神社という弥生時代から続く長い歴史を有する神社があります。産田神社は国産み神産みの神と言われているイザナミが子であるカグツチを産んだ後、亡くなった場所と言われています。この産田神社の祭礼において、さんま寿司が振る舞われていたと日本書紀に記されています。現在でもこの祭礼は続いており、祭礼後の直会という共飲供食の儀式でさんま寿司が供されています。

 

f:id:kumanofish:20190925162640j:plain

さんま寿司発祥の地 産田神社です。

 

いにしえの熊野びともさんま寿司を食べていたのですね。産田神社の祭りで、皆で賑やかにさんま寿司をほうばっている様子が目に浮かびます。千年以上の時を超えて、さんま寿司は現代の熊野に住む人々にも愛され続けています。今でも、祝い事や祭りなどの賑やかな席でさんま寿司は供されています。

 

いにしえのさんま寿司はどのような味だったのでしょうか。赤米や雑穀米を使用していたのかもしれません。おそらく、現代のさんま寿司より塩気は効いていたのでしょう。冷蔵庫のない時代ですので、保存力を高めるために塩を多めに使っていたと思われます。味の変遷はあれど、さんま寿司そのものは千年以上も連綿と生き続けています。千年後の人々にも、さんま寿司という熊野の「伝統」を伝えていきたいものです。

f:id:kumanofish:20190925163203j:plain

産田神社の参道です。

 

Instagram

お魚ワンダーランド 熊野

「この味がいいね」と私が言ったから九月十五日はサカナ記念日

 

俵万智さんの短歌集『サラダ記念日』をもじって、本日、九月十五日を勝手にサカナ記念日に制定いたします。

 

始めまして!クマノミと申します。三重県熊野市で地域おこし協力隊として、地域漁業の振興活動を行っております。本ブログでは、知られざる熊野の魚の魅力を発信していきます。あまり知られていない実は美味しい魚や、おすすめレシピ、郷土料理、郷土史などの観点から書いていきます。

f:id:kumanofish:20190915093853j:plain

世界遺産獅子岩七里御浜です。

まず三重県熊野市について簡単に説明いたします。熊野市は紀伊半島南部に位置する三重県南部の市です。地平線の彼方まで続くエメラルドグリーンの海、緑豊かな山々、山々を流れる清流などの豊かな自然に囲まれています。国産み・神産みの神と言われているイザナミの眠る花窟神社や徐福上陸伝説の残る波田須など数々の神話の舞台になっており、古代史ロマンあふれる土地でもあります。熊野古道を始めとした世界遺産も多数ございます。つまり、熊野市は豊かな自然と歴史文化が共存する土地なのです。

 

熊野市は漁業が盛んな土地でもあります。黒潮の流れる外洋に面しており、様々な魚が回遊してきます。加えて、リアス式の複雑な海岸線も有しており、伊勢海老やアワビなどの高級魚介類も水揚げされます。熊野の魚の特徴を三点紹介します。

  1. 魚種が豊富
  2. 新鮮で麗しい魚体
  3. 清潔

f:id:kumanofish:20190915094103j:plain

揚がったばかりのサンマです。

1.魚種が豊富

熊野市は黒潮の流れる外洋に面していますので、黒潮に乗って多種多様な魚が回遊してきます。サンマ、マグロ、カツオ、ブリ等です。リアス式の複雑な海岸線も有しており、伊勢海老、アワビ、クエなどの高級魚介類も水揚げされます。アジ、サバ、イワシイカ、タコ、イサキなどお馴染みの魚介類も沢山揚がります。熊野はまさにお魚ワンダーランドなのです。熊野の海のすぐ後ろには山々が迫っています。山の豊富な栄養分が川を通って、海に流れ込んでいることも、魚種が豊富な一因なのかもしれませんね。

f:id:kumanofish:20190915094950j:plain

揚がったばかりのアワビです。

2.新鮮で麗しい魚体

熊野の漁業は沿岸漁業が主体です。漁場が近いですので、とれたての新鮮な魚が市場に水揚げされます。中小規模の漁業が中心ですので、魚の取り扱いは丁寧で魚体は総じて美しいです。水揚げから何日も経過した魚しか見たことがない方が、熊野の市場の魚を見たらば、あまりの美しさに息をのむことでしょう。

f:id:kumanofish:20190915094253j:plain

市場の様子です。

3.清潔

熊野の市場は、全国に17箇所しかない優良衛生品質管理市場の一つに認定されており、衛生管理を徹底しております。具体的には、魚を絶対に地面に置かないこと、入場時の手洗い徹底、防鳥ネットの設置、殺菌水の使用等です。温度管理も徹底しており、水揚げされた魚はできるだけ素早く保冷されます。消費者の食の安全ニーズにしっかりお応えします。

 

今回は熊野市と熊野の魚の概要をお伝えしました。今後はより具体的に熊野の魚の魅力を発信していきます。今後もご覧いただけますと幸いです。

Instagram